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最高裁判所第三小法廷 昭和23年(れ)1847号 判決

主文

本件上告を棄却する。

理由

被告人の上告趣意は末尾添附別紙記載の通りでありこれに對する當裁判所の判斷は次きの如くである。

第一點に付て。

本件犯罪の犯意ありとなすには米麥の所有者が法定の場合を除いて其所有する米麥に付政府又は地方食糧營團其他農林大臣の指定する者以外の者に對して賣渡又は其の委託を為すことの認識があれば足るのである。被告人が本件賣渡を為すに際し其相手方が政府又は地方食糧營團其他農林大臣の指定した者でないことを認識して居たことは原判決擧示の證據で十分これを窺える處である、被告人が當時論旨にいう様な意思であったことは原審の認めて居ない事実であるのみならず、たとえそういう意思であったとしても犯罪の成立を妨げるものではないから論旨は理由がない。

第二點に付て。

本件犯罪の成立には公定價格超過、營利も目的等の存在を必要としないものであるし原審もこれ等を犯罪事実として認定して居るものではないから論旨前段は理由がない。論旨後段は原審の刑の量定を批難するものでこれは上告適法の理由とならない。

よって舊刑事訴訟法第四四六條に從い主文の如く判決する。

以上は當法廷裁判官全員一致の意見である。

(裁判長裁判官 長谷川太一郎 裁判官 井上 登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 穂積重遠)

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